[竹郎]


――2007年7月12日。名古屋市内に位置する椿小路学園高等部の図書室では、期末テストが返ってきて、一人憂鬱な気持ちにひたっている少年がいた。

「あ〜あ、またテストの点数下がったなぁ。」
独り言をつぶやいてもこの憂鬱さは晴れない。
何で下がったのか、自分では分からない。
自信はかなりあった。
書き落としは一つもなかった。しかし――
ピリオドを忘れる。三単元のsを忘れる。解答欄をずらす。問題文を最後まで読まない・・・など多数多様のミスを犯した。
まるで中学生のようなミスだ。
ああ、なんでいつもこんなミスを犯してしまうのだろう・・・・・・。

――こんなことばかり考えている自分にも嫌気がさしてきた。
いっそのこと、自殺しようかな・・・。
この何ら変哲の無い世界にもあきたからな。
・・・けど、やっぱ実行する勇気は無い。
ああ、自分にも自殺する勇気があればいいのに・・・・・・。

――いや、自分で死ぬのがだめなのならば、他の人に殺してもらえばいいんだ。
そういや、最近この近辺で連続殺人事件が起きてたな。
犯人まだ捕まってないんだっけ。
じゃあ、せめて俺を殺してから捕まってほしいな。
俺が死んだら、雅孝や亜龍さん喜ぶんだろうな・・・。
まあ、そんな都合よく犯人が殺しに来てくれるはずないか。
結局、俺はいろんなキャラを演じながら生きなければならないのか・・・・・・。

その時、俺の目の前に都合よく犯人は現れてくれた。
黒いジャケットにジーンズ、ニット帽にサングラスといった、ごく平凡な不審者の格好だ。
見た感じ20代後半の男性。まあ、職場でのストレスがたまって犯行におよんだのであろう。
すでに校内で殺した奴がいるらしく、ナイフからは血がぽとぽととしたたり落ちていた。
まったく、こいつは一体何人殺したんだろう。

よし、じゃあ殺してもらうために、少し挑発するか・・・。
確実に殺意を抱くタイプは・・・よしこのタイプでいこう。
さあ演じるとしよう。

「あ、あなたは一体何人の人を殺されたのですか?殺人は良くないですよ。これ以上殺人を犯すより、早く自首した方が良いと思うのですが・・・。」
「うるせぇ!俺はもう50人ぐらい人を殺してる。今さら自首したって、どうせ死刑は逃れられねぇんだよ!」
・・・さすがだ。まさか50人も人を殺しているとは・・・。そんな奴に殺してもらえるとは、俺も光栄だ。
「まあ、そんなことより殺人はやめた方が良いですよ。今やめれば、ここから黙って見逃してあげますから。」
「ふーん。じゃあやめよっかな・・・なわけねぇだろ!!・・・実はな、俺お前みたいな奴嫌いなんだよ。今さ、ちょうど誰か殺そうと思ってたんだよ。・・・っつうことで・・・死ねっ!!」

グサッ!血にまみれたナイフは俺の体へとすいこまれていった。

・・・なんだ、こんなことか。別段痛く感じるわけではない。こんなことぐらい、こんな知能の低そうな奴にやってもらうんじゃなかったな・・・。あっ、でも今こいつにやり返すことぐらいはできるよな・・・。

「とうとう私を刺してしまいましたね。あなたなんかに殺されるのは、かなりプライドが傷つくみたいです。今刺されてみてそれがわかりました。でも、せめて相打ちならば、少しは自分の気が晴れますね。」
・・・と言って俺は体からナイフを抜き、名前も知らない殺人犯の胸を目がけて、そのナイフをつきたてた。
「やっぱり、人を刺すことなんて簡単なんですね。あなたごときがそんなに人を殺せる理由がよく分かりましたよ。」
「くっ、お、お前・・・・・・・。」
「お前?その後は何ですか?それともそれで終わりですか?せめて最後まで言いましょうよ。」
「ぐ、ぐぐぐ・・・ぐばっ」
血を吐いてやがる。そんなに効果があったのか?
「そこまで痛いと感じるのですか?私はそんなに痛くないと思うのですが・・・。」



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